発生予察注意報にもある通り黄化葉巻病はシルバーリーフコナジラミだけが媒介するウィルス病です。
ウィルスを体内に持ったシルバーリーフコナジラミがトマトの樹液を吸うことで、ウィルスがトマトの体内に入り、感染→発病するわけです。
ウィルス病はかなり厄介な代物で、かかってしまった作物を治療する方法はありません。防除するにはウィルスを媒介する害虫をなくすしか方法がないのです。
ウィルス病の有名なところではアブラムシが媒介するモザイク病(トマト、ナス、ピーマン、キュウリなど、タバコモザイクウィルス(TMV))やミカンキイロアザミウマが媒介する黄化えそ病(トマト、レタス、キク、ガーベラなど、トマト黄化えそウィルス(TSWV))古くはヒメトビウンカが媒介するイネの縞葉枯病などが知られています。
ウィルス病が厄介と言うのは、害虫の発生密度が少なくても被害が大きくなる可能性があることです。(もちろん害虫の密度が高いほうが被害は甚大の可能性は高いですが)
ウィルスを持った(保毒した)害虫が作物に寄生して次から次へ病気を広げていく。そんなイメージを持っていただければよいかと思います。極端なことを言えば、保毒した害虫が1頭でもいればねずみ算的に被害が拡大する恐れがあるということです。
したがってウィルス病が発生したら、その伝染経路を断つ必要があります。伝染経路には保毒している1.害虫(シルバーリーフコナジラミ)、2.作物(トマト)、3.温室内外の雑草(ヒャクニチソウなど)が存在しているので、それらを除去することが必要となります。
1.のシルバーリーフコナジラミは注意報にもあった方法で防除します。薬剤散布や防虫ネットの設置が必要です。特に薬剤散布は成虫を速効的に殺す剤を選ぶことが重要です。それは遅効的な剤では保毒した成虫が死ぬまでにウィルスを感染させる恐れがあるからです。トマトのコナジラミ防除で高い効果を持つラノーテープも次世代の害虫密度を抑えるのにはかなり有効ですが、このウィルスの伝搬を防ぐといった面では万全ではありません。たとえラノーテープを設置していたとしても、それに安心せず速効的な薬剤での防除が必要です。また側窓の防虫ネットは必須ですが、出入口にも1mm目のネットは必要と考えます。
2.の発症した作物は、できるだけ速やかにほ場の外に持ち出し密封して枯らすか焼却処分が必要です。もう少し待てば良い果実が収穫できるからなどと、栽培を続けることは発生源をほ場に放置していることにほかなりません。厳しい言い方をするようですが、目先の収穫に目を奪われず今後のウィルス対策を考えてください。もちろん発症株から欠いた脇芽などを通路に放置することは厳禁です。
3.の雑草類は感染植物に限らず、他の害虫の発生源にもなるので徹底した除草が必要です。IPMの進んだヨーロッパでは施設周辺に雑草はもとより、自家消費用の野菜など栽培することも控えています。日本においては、そこまでの徹底は難しいかもしれませんが、少なくても温室の周辺2mくらいは完全除草したいものです。また栽培作物の中ではサツマイモにシルバーリーフコナジラミの寄生が多いと言われており、隣接した畑にサツマイモが植わっているほ場ではより注意が必要です。
黄化葉巻病はシルバーリーフコナジラミが吸汁することでのみ感染する病気です。水や土による伝染やトマトの汁液による感染はないので、上記対策を講じることで被害を最小限に食い止めることが可能です。
ウィルス病には要防除水準といったものが存在しません。あくまでも害虫ゼロ、保毒植物ゼロが発生を抑える必要条件です。蔓延により収穫が激減する前に基本的な対策が必要と考えます。
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