IPM防除 天敵,微生物農薬,粘着シート,防虫ネットなどを効果的に組み合わせましょう 

意外と簡単!イチゴのIPM(総合防除)ハダニ編(チリカブリダニの時代)

アブラムシ編から続く

ゼロ放飼(害虫ゼロでの天敵の導入)によりアブラムシ防除の効果が安定したことは前述の通りですが、ハダニ防除ほどゼロ放飼が効果を高めた技術はないと考えています。

日本の施設栽培における初めての天敵農薬(昆虫も日本の法律の下では「農薬」扱いなのです)である「チリカブリダニ」(商品名:スパイデックス)が登録されたのが1995年です。
それから「ミヤコカブリダニ」(商品名:スパイカルEX)の登場まで10年ほど要するのですが、この時期は天敵利用が誰にでもできる技術でなかったことは事実です。

「チリカブリダニ」を導入するにあたって重要視されたことの一つに「害虫密度」があります。
生物防除は「数対数」という宿命がありますので、害虫が増殖した後で天敵を放飼(圃場に放つこと)をしても防除効果を上げるには長い時間がかかり、効果を実感するに至りませんでした。
逆にハダニしか食べない「チリカブリダニ」を害虫ゼロの時期に放飼しても、いつの間にか天敵はいなくなり定着を確認できませんでした。

そこで天敵導入前にイチゴの株を何株も調査して、ハダニの寄生株率を調査したのです。
10アールに8000株ほど植わっているイチゴですが、時には数百株を調査してそのうち何株にハダニが寄生しているかといった気の遠くなるような作業が必要でした。
当時言われていたのが「寄生株率10%」という数値でしたが、夕方暗くなるまでできるだけ多くの株を調査しても全ての株を網羅できるものではありません。
調査し切れていない場所のハダニ密度が高い場合には、そこが発生源となって多発してしまう事例も見受けられました。

初期のチリカブリダニでうまく防除できる確立が低かったのは、このような理由からだったと考えています。

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写真:ハダニを捕食するスパイデックス(チリカブリダニ)

ハダニ防除編(ミヤコカブリダニ登場)へ続く