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イチゴでのクロマルハナバチ利用

昨今のミツバチ不足により、イチゴでもクロマルハナバチを利用する機運が高まっています。
今まで長年ミツバチを利用されてきた方は、ミツバチとクロマルハナバチの違いに戸惑っていることも多いかと存じます。
このコーナーではクロマルハナバチをイチゴの受粉に使う際の注意点について説明します。


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写真1:イチゴの花に訪れるクロマルハナバチ

「マルハナバチってイチゴの花が好きなんだ!」
何年か前に、トマトで二ヶ月程度使用したマルハナバチをイチゴの圃場に放したときの感想です。
働き蜂の数が減りトマトでは既に充分な交配ができない巣箱でしたが、イチゴの温室に入れてやると何頭ものマルハナバチがイチゴに訪花するではありませんか。
結局その巣箱は更に一ヶ月程度イチゴの交配に役立ちました。

当時はイチゴの交配にマルハナバチを使う事例はほとんどありませんでした。ミツバチとの価格差や使い勝手の違いからマルハナバチをイチゴに使うことはハナから頭になかったのです。
ところがここ数年間にイチゴの交配に使われるミツバチの不足が顕著になり、受粉が行われないと商品価値が著しく低下するイチゴの栽培においてクロマルハナバチの利用が急速に進んでいます。

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写真2:イチゴ圃場へのクロマルハナバチ巣箱設置の様子

冒頭に述べた通りマルハナバチはイチゴの花が好きです。好きという言い方は正確ではないのかもしれませんが、トマトでの利用と比べた場合明らかに巣箱の寿命は長いと言えるでしょう。
また一度の飛行で後ろ足につけてくる花粉ダンゴの量も、トマトが40mg程度に対しイチゴでは100mg程度という調査結果もあることからも、イチゴの圃場でも充分に活躍してくれることがうかがえます。

まず最初に簡単にイチゴの圃場でのクロマルハナバチの活動について紹介させて頂きます。
花粉を集めてくる外役蜂の数は巣箱にいる蜂全体の一割程度とされています。巣箱の中には概ね50頭~100頭の蜂がいるので、外で働く蜂の数は5頭~10頭です。
これは数千頭が働くミツバチに比べて極端に少ない数ですが、数頭のクロマルハナバチは数千頭のミツバチと同様の働きをすることがわかっています。
クロマルハナバチは一日に10回程度飛行をしますが、一回の飛行で一頭がおよそ300~400の花に訪れます。つまり300花×10回飛行とすると一頭が一日に3000花に訪れることとなります。前述の通り外役蜂は5~10頭ですので、一つの巣箱で一日に受粉できる花の数は15000~30000花となり、10アールあたり8000本程度栽植されているイチゴの圃場では10アール~20アールの受粉を充分にまかなうことができます。人海戦術ならぬ蜂海戦術のミツバチに対して、マルハナバチは少数精鋭と言ったところでしょうか。
また、マルハナバチは本来寒い地域に生息しているので、ミツバチが活動を始めないような早朝や曇雨天の日、あるいは今年の初めのような強い寒波による低温条件でも受粉活動をしてくれることが確認されています。
またイチゴの花には蜜があることから、トマトでは訪花活動をしない雄蜂も蜜を吸うためにイチゴに訪花します。(写真3)雄蜂は花粉を集めることはしませんが、写真の通り毛むくじゃらな蜂が花の周りを動きまわることで交配の役目を果たしてくれます。花に蜜があることは成虫の栄養源が圃場内に確保されていることになるので、成虫の寿命が延びる要因になっているとも考えられます。

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写真3:イチゴの花に訪れるクロマルハナバチ雄成虫


マルハナバチが花粉を集めるのは、1.幼虫の栄養源にするため。2.巣の材料とするため。の二つの理由からで、特に大切な幼虫を育てるために大量の花粉を必要とするわけです。広い温室でイチゴの花が充分に咲いている場合はいいのですが、圃場が比較的狭かったり花が少ない時期だったりすると、巣にとって花粉が足りない状況になることがあります。
花粉が足りないと、同じ花に何度も行ったりまだつぼみの花弁をこじ開けようとしたりする行動が見られます。これは雄しべの先端がちぎられていることや花托(果実になる部分)が黒くなることで確認ができます。
また花粉が足りなくなると巣箱の外に幼虫を出す、いわゆる間引きが行われることもあります。
このような状態になると巣の寿命が短くなることに加え、過剰訪花による奇形果の発生が懸念されます。

クロマルハナバチの巣箱は出入口の穴に工夫がされており、穴が二つの状態で出入りすることができ、穴を一つにすると入り口専用となります。
過剰訪花の兆候が見られたらこの機能を使って飛行時間の調整を行います。すなわち午前中の数時間だけ穴を二つにして出入りを自由にさせ、その後穴を一つにすることで飛んでいる蜂を回収してしまうのです。そして幼虫が飢餓状態にならないように上蓋を開けて添付されてくる乾燥花粉を与えます。
マルハナバチとミツバチの一番の大きな違いは、この巣穴を閉めた状態で花粉を与えることにより飼うことができることです。
例えば農薬散布などで蜂を一時的に施設外に避難させたい場合など、出入口を締め切った状態で乾燥花粉を与えることで何日も飼うことができます。
また、回収した巣箱を違う圃場で使うこともできるので、施設が複数ある場合でも一つの巣箱を使いまわすことができます。
特に小面積の圃場では数棟のローテーション利用が効率的です。
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写真4:クロマルハナバチ巣箱の出入口


見た目はミツバチよりもふた回りも大きく、羽音も勇ましいので怖いと感じる方もいるかもしれませんが、実はクロマルハナバチは極めておとなしい性格です。
あてにしていたミツバチが入荷されなかったり、突然個体数が減ってしまい受粉に影響がでそうなときにクロマルハナバチの利用を検討されてはいかがでしょうか?
思ったより簡単利用することができて確実な受粉活動をしてくれますよ。

マルハナバチのお問い合わせはsupport@savegreen.co.jpまでお気軽にお問い合わせ下さい。