IPMにチャレンジ!

 近年、病害虫防除の方法としてIPM(アイ・ピー・エム)という言葉をよく耳にします。
これは総合的害虫管理と訳されるとおり、病害虫のコントロールを農薬のみに頼らず、耕種的防除や天敵昆虫を積極的に導入して 総合的に病害虫防除を行う実践方法です。
現在IPMと言うと天敵のみが取りざたされがちですが、天敵を利用するのもあくまでも防除の一手段としてとらえIPMの有用性、 将来性などを検証してみたく考えます。

天敵利用の必要性と優位性を探る

 化学合成農薬を取り巻く状況は、薬剤抵抗性やリサージェンス問題による技術的なマイナス面のみならず、環境問題や 消費者の残留農薬に対する過敏な反応、加えて散布者の健康問題までが取りざたされ、今後より一層厳しくなって行く ことが予想されます。
こうした中で天敵昆虫を使ったIPM(総合病害虫管理)がヨーロッパを中心に展開され、わが国においても前述の問題回 避の有効な策として注目されていますが、実際に生産農家にとって「使える」技術となりえるのでしょうか? IPMの優位点と不利な点を以下に紹介します。IPMが使えるかどうかの判断材料の一つになればと考えます。

1. 優位な点
A) 薬剤抵抗性がつかない(極めてつきにくい)
B) リサージェンス問題がない(リサージェンスについてはこちら
C) 作物に対する残留問題がない(極めて少ない)
D) 散布者が被曝しない
E) 薬剤散布労力が少ない(主に天敵昆虫)
F) 消費者、市場に対してイメージが良い(PRは必要)
G) ハウス内の観察をするようになる(手間がかかる面もある)
H) 一度技術が確立すれば持続的に利用できる

2. 不利な点
A) 薬剤と比べて効果が不安定
B) 導入に際してチェックすべき事項が多い(温度、薬剤の影響、害虫密度)
C) ウィルス対策や対象外病害虫対策に問題がある
D) コストがかかる(対薬剤費という面において)
E) 多発生時に対応ができない
F) 常に神経を使う(優位面でもあるが)
G) 環境整備などが必要(優位面でもある)
H) 生産物の評価(今後変化する可能性は大いにある)

 薬剤を使う感覚で天敵昆虫を導入してもうまくいかない場合が多いのは、こういった有利不利な面をきっちり把握していない ことが原因と考えます。
それでは具体的に天敵の導入に当たってどのようなことをすればよいのでしょうか。